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夢を覚えていることはほとんどないのですが、時々奇妙に残る夢があります。
夢ならではのつじつまの合わなさや混乱ぶり、支離滅裂さ加減は面白かったり怖かったり。
日々の出来事や心のありようを不思議な形で映してみせる夢の形を、私の好きな作家は「不意に配られる、誰からとも知れない郵便物」と表現していました。

先日見た夢の話。
多少つじつまを合わせて脚色しています。

通っていた小学校の一室、古びた教室は広くてたくさんの人がいる。窓の外はからりと晴れたさわやかな日。
私は他の人々と一緒に教室に模擬店のような小さな店を広げる。周囲には知り合いの店もあって、にぎやかな雰囲気が満ちている。

けれど気づくと人の気配は消えていて、室内はしんと静まり返っている。見回してもただ雑然と物が散らかり、埃をかぶっているばかり。私一人が取り残されている。
外は変わらずさんさんと陽が降り注ぐのに、なぜかとても寒い。窓から見える木々は青々と茂り、季節は春か夏のようなのに、私は震えている。手近にあったダウンを着込んだが、寒さは増すばかりで歯の根も合わない。他の人たちの行方は私にはさっぱりわからない。

外は暖かいに違いない。陽射しにあふれた校庭に面した窓を開けるが、震えはとまらない。風景は変わらないのに、なぜかここで店を広げたのは昔のことだと思えてくる。

トミタさんが窓の外を通りかかる。私を見つけ、ダウンを脱ぐようにと笑いながら身振りで伝えてきた。私は首を振って答える。寒くてたまらないんです。実際うまく喋れないほどに私は凍えている。
トミタさんがさらに笑う。着れば着るほど寒くなるんだ。脱いだ方が暖かくなる。半信半疑で私はダウンを脱ぎ、シャツを脱ぐ。大きめのTシャツ一枚になると確かに寒さは消え、私は心地よい風に吹かれていた。

トミタさん、もしかして、私は死んだの?
啓示のようにひらめいて問いかけた。少し残念そうにトミタさんは頷いた。地震だよ。あの日。
私は辺りを見回す。揺らされて壊された教室の中の、店の残骸。そうだった、あのさわやかな午後に、ここに埋もれて死んだ私の体。寒々しさを感じていたのは、肉体を失ったのに気づかなかったからだ。

奇妙な解放感を感じる。生への執着も悲しみも後悔もない。これまでにないほどに自由に感じる。
トミタさんが笑っていて、私も感謝の笑みを返した。でも多分トミタさんにはもう何も見えなかっただろう。 
私の意識は吹く風に紛れて流されていった。
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