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ビゴのテキストが少々おいてあります。(ロジャドロ中心です) 原作者様・制作会社様とは一切関係はありません。
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 これは感傷だ。
 彼女を手放すのは私の身勝手に過ぎず、そしてまた私の手を離れた彼女を心配するのも私の脆弱さだ。
彼女は婚約者の元に戻り、その保護を受けてもう一度微笑むのだろう。彼はまるで騎士のように忠誠をこめて、彼女を守ると言った。その過剰と思えるほどの純朴さに、私は生来の皮肉を収めるのに苦労した。
 確かに彼は努力するだろう。それがはたしてうまくいくだろうかと思ってしまうのは、私が人々の間で彼の保ち続けている何かを失ったからかもしれなかった。それとも私が、彼女に彼との幸福を望めないからかもしれない。それならばなおさら、この感傷を心から切り離さなくてはならない。
 あの「余りにも有名な映画」のひと場面のように、彼女は音楽に彩られた世界を生きるのだ。
 彼女の後姿を目で追わぬように努力し、冷たい手でテーブルの上の花に私は触れた。彼女が根こそぎ変えて今永遠に奪い去って行った私の一部の替わりに、ここへ残していったただひとつのもの。薄い花弁は私の指の下ではかなくつぶれ、はらはらと散った。花の微かな香りが立ちのぼりマンサニージャの香りと混じりあった。
 もう一度あの映画のラストを思い出した。音楽と花と電車と舞踏と、銀の歌声。
 私は低く呟いた。
「さよなら銀声」
 私は顔を上げなかった。だから、ダイヤの輝く彼女の耳に、声が届いたかはわからなかった。


短いけど断章パラレルP.I.編。パラレルは色々自由だけれど、その分彼らのキャラクターはどうしても形を変えてしまう。違和感を感じます。
どうでもいいけど、さっきから左目まぶたがさがって視界が悪いなーと思っていたら、アレルギー症状で腫れてましたした。時々しかならないから忘れていたけど、私はアレルギー持ちだった。まぶたが下がる~とか言ってた登場人物がジョジョ6部に出ていたなあ。毎日これだったら確かにへこむよね。

さて、旅行前のブログ更新は多分これが最後になると思います。戻ってきましたら、またどうぞよろしくお願いします。
では行ってきます。

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 彼はほとんど憎んでいるような真剣さで私を見た。彼の押さえている片腕は変わらず身体に添って力なく垂れ、まるでその様子が内面の疲弊をあらわしているようだった。
「君は自分も相手も苦難に投げ込むことしかできない、そんな危難の感情を感じて、それでもその相手を求めずにはいられない、そんな思いをしたことはないか」
 低く吐き出すように彼は言って、それから唐突な問いにためらう私の返事を待たずに続けた。
「彼女の手を見たか。彼女は僕らを助けるために多くの犠牲を払った。僕らは解放され、その代償のように彼女の手には傷が残り、僕はこの腕を得た。この腕を見るたびに彼女が苦しんでいるのはわかる。そして僕もまた、彼女を見ると苦しむんだ」
 私は彼女が昔話をする様子を思い出した。決して満たされてはいなかったけれど、私たちは幸福だった。子供時代特有の、寂しい幸福だったのです。彼女はその時の幸福を味わっているような表情でそう言った。
 それは今の彼の表情に似ていた。寂しさは時々、人の顔に微笑みのように見える表情をもたらす。
 彼女もまた彼を憎からず思っているのは、たった二度会っただけでたやすくわかった。にもかかわらず言い訳めいた言葉を口にする彼に、私は静かに苛立った。
「君はなぜ、彼女が夫と結婚する前に手に入れる努力をしなかった?」
「なぜ?それは僕も聞きたい。なぜ僕は彼女を手に入れていけないのか。色んな理由をつけることは出来るだろう。だが僕の気持ちに理由をつけられないのと同様、なぜだめなのかに理由は見つけられなかった」
「違う。手に入れてはいけないと誰に強いられることもない。君が、彼女を手に入れようとしないのはなぜなのか、私には理解できない」
 彼は黙りこんだ。目を逸らして腰掛けていた寝台に落ちていた羽根を拾う。枕に入れるものとは違う、大きく長い白い羽根だ。片手でしばらく弄した後に興味を失ったように部屋の隅へと投げた。私が羽根の行方を目の端で追っていると、彼が小さな声で私の名を呼んだ。今までのように親しげではなく、よそよそしい声音だった。
「では僕からもう一度君に聞こう。先ほどの質問だ。君は誰かを愛することが罪だと感じたことはないか。それでも求めずにはいられないと、そう思ったことはないか」
 私はないと答えた。
「私は人を愛すると言うことが、その相手を手に入れるために努力することだと信じている。例えば結果うまくいかなくとも、自分の気持ちに反して、それが罪だからなどと理由付けしたくはない」
 私の答えを聞いて彼は顔を上げた。私の言葉に今は深く憤っているのがわかった。
「ではもうひとつ聞こう。僕には君がただのアンドロイドに過ぎないドロシー嬢に執着しているように見える。けれど君は認めようとしない。君もまた理由付けをしているんじゃないか?」

断章ロジャー&友人編。このシーンはロジャーにも友人にもイラッとします。
自分ルールでの二次小説における禁じ手は「パラレル」「オリジナルキャラ登場」だったのですが、もうそのルールは破りまくっています。所詮自分ルールなのでかまわないのですが。

「手を。手を繋いでいて、ロジャー。今だけ」
 彼女は私の顔を見ることもせずに囁いた。その声は頼りなく揺らぎ、うつむいて鳶色の髪に隠された瞳は、濡れてはいないかと思えた。
 私に対し奇妙に強情で意地っ張りな様子を貫いてきたこの少女が、不意に弱々しい囁きをもらしたことに私は戸惑った。父を信じきれず、かといって憎むことも出来ない。愛さずにはいられず、しかし許すことも出来ない。彼女は近くにいる私に、たったひとつ、手を握ることを望んだ。
 私は彼女の手をとった。華奢な指が私の指に絡みつき、彼女の細い肩は止まらぬ震えを私の腕に伝えた。よく磨かれた床は濡れて冷たかったが、彼女の震えは寒さからではなかった。
「大丈夫か」
「ええ、……いいえ、もう少し」
 濡れたシルクを通して彼女の熱を感じた。彼女のつけているネロリとゼラニウム、パチュリの香りがした。
 私は彼女を腕に抱いていいか少しの間迷い、それから抱き寄せた。彼女は抗わなかった。

「もう大丈夫。ありがとう」
 手をどけて身を起こした彼女の顔はまだ青ざめていて、声がわずかに震えていた。立ち上がり、服のしわを伸ばす仕草をして、床に置いたままだったバッグを拾い上げる。私の視線を避けるように出口の方を見た。
「行くわ」
「どこへ?」
「父に会いに行く。それから学校へ戻る」
 私は思わず彼女の腕を掴んだ。彼女は厳しい表情で振り返った。私を見返す瞳は潤んでいた。
「放して」
「だめだ」
「なぜ?」
「君が」
 言葉にならず、私は刹那激しくためらった。ただ一言、行くなとさえ言えなかった。私は手を放した。


またもパラレル。パラレルネタはもう少しありますが、はたしてパラレルはどういう位置づけをしていいのか自分でもよくわからない。パラレルネタは苦手だったはずが、考え始めるととまらない。
イメージ的に、ロジャーは交渉人というよりP.I.(私立探偵)のようです。ハードボイルドが似合いそう。泣いたり笑ったり出来るドロシーを書いてしまうのには抵抗があります。

 桟橋に膝をついて、涙の熱だけを頬に感じながら、静かに冷えていく体を抱いて。彼女の最期の言葉の意味を永遠に理解できないままにこれからもこの光景を夜ごと夢に見て、そのたびごとに苦しむ事が定めづけられていると知っていた。

 銃弾が発射され、強い反動を腕に受けた瞬間に、濁流のように彼女との数々の記憶がよみがえった。何が先で何が後なのかも判別できない程に入り混じった情報がなだれ込んでくる。そのすべてが確かに体験したとしか考えられないほど鮮やかに生々しく、同時に体験したはずのないもので、彼は記憶の混乱の渦中に投げ込まれ、呆然と立ちつくした。
 青ざめた彼女が、それでも確かな意志をこめた厳しい顔つきで高らかに宣言する映像を、暗い部屋で部下と共に見せられた。彼女を殲滅すべき敵の一員として見なくてはならないことを、どう理解していいかわからなかった。
 思いがけない形で再会したのはあの映画館の前、雨の夜で彼女は傘を持っていなかった。
 立場上許されぬと知りながら、投獄された彼女に幾度も会いに行った。
 彼女の支援者に犬とののしられた。背にひとつふたつと石が投げつけられたが、あえて振り返らなかった。
 細い格子ごしに手が伸ばされて、殴られた目の縁の痣を細い指がなぞった。
 部屋で向かい合って食事をしている時に、彼女が身を乗り出しキスをしながら銀貨についてなにか問い掛けて、自分は怒り傷ついた。
 カフェで本を読み、一部の仲間とだけ話すようになった学生時代の彼女を、職についたばかりの時に時々見かけた。彼女はいつも不安な顔をしているように思えた。
 懐かしいと言うより悲しいだけ、そういった風情の記憶の群れ。
 夜空に光がきらめいて、空気が爆弾の衝撃を伝えてきた。頭のどこかにしまいこまれていた記憶が銃声と共に宙に吸い込まれ、あとに残されたのは桟橋に倒れ伏したひとりの女の姿と、白い息を吐いて立つ自分だけだった。肩で息をするごとに、残滓さえ虚無で塗りつぶされるように失っていく。眩暈がする。
 彼女の方へ足早に向かいながら、彼は殴られたように痛む頭で、先ほどまで彼を強く捕らえていたなにかを思いおこそうとしたが、うまくいかなかった。あれほど鮮やかだった記憶は砂にしみ込む水のように消えていった。
 今この時に、なにかがひと時彼の元へ帰って来て、懐かしい声でさようならを言い、そして再び去って行った。焼けるような喪失感があり、けれどそれもなじみ深く悲しかった。
 抱き起こす前にもうわかっていた。自分の記憶同様に彼女はひと時帰って来て、そして去って行くのだ。残るのは彼女を撃った罪の意識と悲しみと、やりきれない夜々と、過去に取り残された自分だ。


ダストンとシベール断章。今の時点では、この話を書き上げることはできないと思っています。彼らが本当はどんな関係だったのか、想像するのは楽しいのですが。
 男は半ば椅子から立ち上がるようにして私に向かい、苛立ったようにテーブルに拳を打ちつけた。
テーブルを挟んでも、男の飲んでいた酒の臭いを嗅ぎ取れた。この居丈高で孤独な男が私の雇い主でありながら、また決して憎むことの出来ない相手であるとわかっていた。私たちはこの人生のうちの幾度かの夜を、共に歌について、また孤独について語ったこともあった。
 バルコンの下でかつて歌いさえしたと男が漏らしたのを一度だけきいた。色恋沙汰とは無縁に見えていたので、私は混ぜ返そうとしたがやめた。焦点の合わない酔いに濁った男の目には、私の軽口を封じてしまう悲しみが見えた。私は黙って自分の酒をあおり、それから男の苦しげな罪の告白を聞いたのだった。
 私の回想を破って男は口を開いた。
「わかっているんだろう、この街ではあの男に逆らうことは出来ない」
「では彼女はどうする。見殺しにするのか」
「じゃあお前はどうすることが出来る?お前にどんな手立てがあると言うんだ」
 男の声もまた深い怒りをはらんでいて、私は虚をつかれた。憤っているのは私だけではないのだ。

なんとなくビゴパラレル的短文。セレナタねたを絡めたかった。
ドロシーが出せなかったー。
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