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ビゴのテキストが少々おいてあります。(ロジャドロ中心です) 原作者様・制作会社様とは一切関係はありません。
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 彼はほとんど憎んでいるような真剣さで私を見た。彼の押さえている片腕は変わらず身体に添って力なく垂れ、まるでその様子が内面の疲弊をあらわしているようだった。
「君は自分も相手も苦難に投げ込むことしかできない、そんな危難の感情を感じて、それでもその相手を求めずにはいられない、そんな思いをしたことはないか」
 低く吐き出すように彼は言って、それから唐突な問いにためらう私の返事を待たずに続けた。
「彼女の手を見たか。彼女は僕らを助けるために多くの犠牲を払った。僕らは解放され、その代償のように彼女の手には傷が残り、僕はこの腕を得た。この腕を見るたびに彼女が苦しんでいるのはわかる。そして僕もまた、彼女を見ると苦しむんだ」
 私は彼女が昔話をする様子を思い出した。決して満たされてはいなかったけれど、私たちは幸福だった。子供時代特有の、寂しい幸福だったのです。彼女はその時の幸福を味わっているような表情でそう言った。
 それは今の彼の表情に似ていた。寂しさは時々、人の顔に微笑みのように見える表情をもたらす。
 彼女もまた彼を憎からず思っているのは、たった二度会っただけでたやすくわかった。にもかかわらず言い訳めいた言葉を口にする彼に、私は静かに苛立った。
「君はなぜ、彼女が夫と結婚する前に手に入れる努力をしなかった?」
「なぜ?それは僕も聞きたい。なぜ僕は彼女を手に入れていけないのか。色んな理由をつけることは出来るだろう。だが僕の気持ちに理由をつけられないのと同様、なぜだめなのかに理由は見つけられなかった」
「違う。手に入れてはいけないと誰に強いられることもない。君が、彼女を手に入れようとしないのはなぜなのか、私には理解できない」
 彼は黙りこんだ。目を逸らして腰掛けていた寝台に落ちていた羽根を拾う。枕に入れるものとは違う、大きく長い白い羽根だ。片手でしばらく弄した後に興味を失ったように部屋の隅へと投げた。私が羽根の行方を目の端で追っていると、彼が小さな声で私の名を呼んだ。今までのように親しげではなく、よそよそしい声音だった。
「では僕からもう一度君に聞こう。先ほどの質問だ。君は誰かを愛することが罪だと感じたことはないか。それでも求めずにはいられないと、そう思ったことはないか」
 私はないと答えた。
「私は人を愛すると言うことが、その相手を手に入れるために努力することだと信じている。例えば結果うまくいかなくとも、自分の気持ちに反して、それが罪だからなどと理由付けしたくはない」
 私の答えを聞いて彼は顔を上げた。私の言葉に今は深く憤っているのがわかった。
「ではもうひとつ聞こう。僕には君がただのアンドロイドに過ぎないドロシー嬢に執着しているように見える。けれど君は認めようとしない。君もまた理由付けをしているんじゃないか?」

断章ロジャー&友人編。このシーンはロジャーにも友人にもイラッとします。
自分ルールでの二次小説における禁じ手は「パラレル」「オリジナルキャラ登場」だったのですが、もうそのルールは破りまくっています。所詮自分ルールなのでかまわないのですが。
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