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ビゴのテキストが少々おいてあります。(ロジャドロ中心です) 原作者様・制作会社様とは一切関係はありません。
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好きシーンで創作30題 『20 シーツにくるまる』 ロジャドロです。
*こちらからお借りしました → 好きシーンで創作30題

夜と同じ色のシーツの間で彼女の主人は眠っている。夜は深く、寝室に光はないが、寝台のそばに立つ彼女の目は彼の体の輪郭とそれを覆う闇のすべてを見分ける。彼の寝息と安らかな表情を、体温や脳波や心音を確かめる。
これはどこか儀式めいた彼女の秘密だ。彼が知ればひどく憤るだろうことはわかっているが、眠る彼の寝室を彼女は時折訪い、何十分も眺めている。多分彼女自身そうする理由を理解できずにいる。

片腕を持ち上げて視線を移した。その細い腕の中に彼の体を捕らえて、強く抱きしめたことがただ一度あった。彼の体を痛めつけんばかりに締めつけた、ほとんど死に至らせるまでの抱擁。
メモリーの内に残る混乱のまざまざしさ。彼女はものごとを忘れるようにはできていない。なにもかもが沈み込むような夜半、彼の傍らで彼女はその記憶について幾度も考える。なにが問いでなにが答えかもわからないままに。

低い吐息とともに彼が寝返りを打った。シーツが彼の体の形に添って流れをつくり、背が闇の中にむき出しになる。目を覚ますおそれもあったが、彼女は上げていた手を伸ばして、彼の抱えこんだシーツをそっと引いてその背にかけなおした。
不意に彼がもう一度寝返りを打ち、はずみで指先がわずかに彼の肩に触れてしまう。彼女は身を引く。

彼は目を覚まさない。

来たときと同様に、音も立てずに彼女は寝室を後にした。ひそやかに扉は閉じられた。
眠る彼を包んだ同じ闇が、屋敷の奥へと彼女の姿を隠した。

(20040701)

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