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ビゴのテキストが少々おいてあります。(ロジャドロ中心です) 原作者様・制作会社様とは一切関係はありません。
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ロジャドロです。

 
Later On

 寝台の上で靴も脱がずシーツを体の下に敷いたまま眠る男は、子供のように縮こまって寒そうに自らの体を抱いていた。夜半をまわってから気温は下がり、人の身には肌寒さを感じるのだろう。
 世話を焼かせてくれない酔っ払いほど手に負えないものはない。ノーマンは心配して、彼女にロジャーの様子をみるように頼んでいた。寝室にロジャーが戻り、寝入った頃を見はからって入ってみれば、どれくらい飲んだのだか男からは強い酒のにおいがした。
 履いたままの靴を脱がせて床にそろえる。ずいぶん乱暴に扱ったのに、乱れた髪の男は起きる気配もないから、かがみこんで鼻をつまんでやる。もごもごと何かつぶやいて顔をそむけ、さらに背を向けてしまった。男の肩越しに手を伸ばして耳をつまむと、今度は手で払いのけられた。
 明かりをつけないまま新しいシーツを出してきて、男の背中に広げた。温まるのか体の緊張が解けたのが見て取れた。寝台の反対側に移動して寝顔を覗き込む。男は疲れた表情で眠っていた。
 そんな顔をしばらく眺めてから、彼女は手を寝台に置いて男の上にかがみこみ、男の閉じられたまぶたにキスをした。
 一瞬触れるだけで、目も閉じず唇を寄せることもない、不器用なキスだった。

 ただ眠るこの男の手を取って触れることもできたが、彼女はそうしなかった。かわりに身を起こし、落ちていたネクタイを拾い上げ、窓から床に投げかけられる街からの弱い明かりを避けて優雅に歩き、そうして静かに寝室の扉を開けた。
 おやすみなさい、ロジャー。
 細い影が廊下へと抜けて扉が閉まる前に、頼りなく響く囁きがひとつだけ、彼女のかわりに部屋に忍び込んだ。

(20061210)

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